【書評】ビジョナリー・カンパニー
すごくいろいろなことを考えさせられる本だった。
まず、訳者が僕のバイブルの1つである「闘うプログラマー」と同じ山岡洋一だった時点で期待度は高かった。
内容は、長期にわたって繁栄し、尊敬を集める企業に備わっているカルチャーの分析なわけだが、特に人材づくりの周辺が興味深い。
それは、「強固で単純な価値観を、ときに洗脳的な方法を用いても徹底的に社員に植え付け、それによって組織を強化し忠誠心を高める」という方法だった。やっぱりそうだったか! また、その方針についていけない者は容赦なく解雇するとも。
ここを読んでまっさきに連想したのは映画「フルメタル・ジャケット」で、実際ああいうやり方の方が組織作りには適していることは自分の過去の経験からいってもよくわかる。
もし将来会社を作って組織を作る側になったら、おそらくそういう方向にもっていくだろう。(フルメタルジャケット風にやる、というわけではないけども、意識統一は大事)
が、そういう組織の一員として自分が働きたいか? と自問すると、矛盾しているようだが徹底的にイヤなんだよな。仕事の内容や待遇とは無関係にイヤだ。一つの器官でいるよりすべてをコントロールしたいと思ってしまうんだよな。これは幼稚なのかもしれないし、自意識過剰なのかもしれない。もちろん大きな組織でなければできない仕事も世の中にたくさんあることはわかっている。でもやっぱり自分がその一員にはなりたくない。
やるのはいいがやられるのは嫌というのはどう見ても矛盾しているが、感想としてはどうしてもそうなってしまうなあ。組織論の本かと思いきや自分自身を深く考えてしまった、という点で意外な一冊だった。まあ名著であるという評判は正しいです。
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コメント
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語弊の無いように別の表現で書くと、ビジョナリーカンパニーは、「無理矢理社員を洗脳する会社」ではなくて、「社員が激しく共感しうる価値観を提示している会社」、ということですね。社員が会社のビジョンを狂信しているので、傍から見ると「洗脳されている」ように見えるわけです。
当然、共感できるかどうかは人によってまちまちなわけで、共感できない社員は「容赦なく解雇される」前に、「居場所が無いと感じて自ら早々に会社を辞めたくなる」ことでしょう。
例えば、捕鯨反対の価値観に日本人は共感できませんが、他の国には、捕鯨反対が絶対正義だと信じて疑わない人々がいます。そういう人々のグループは、グループの存在理由がグループの構成員によって強固に支持されているので、強い組織になります。
組織の価値観が正しいかどうかは実は関係なくて、その価値観を組織構成メンバーが信じているということが、組織の強さの源ですね。
投稿: だる | 2005.10.20 22:36