【書評】Winnyの技術
Winnyのネットワークがどのようにして構築されているか、を技術的な点に絞ってWinny作者自らが解説した本。
技術の解説はたいへん面白かった。自分も一時期ユーザだったわけですが、「このあたりは技術的に難しそうだな」と思っていたところの疑問が概ね解けた。もちろん最初からうまい仕組みを思いついたわけではなく、試行錯誤の末にいきついたことであることが良く伝わってくる。その試行錯誤の手順の詳細まで出ていれば完璧だったが、濃いめの内容である。
しかしこれだけのものを一人で、かつ純粋な創作意欲だけをモチベーションに作ったのは尊敬。普及が進めば社会的には「抹殺」される運命であることはわかっていただろうに。
だが、この作者の姿勢にはひとつ決定的に矛盾がある。
もちろん本には書けない裏事情もあるはずなので、これだけから断定はできないが。
「悪用される恐れがあっても、技術的に有用なら開発する価値はある」とP2Pを支持する一方、Winny自体のソースコード公開を拒んだ理由を、「悪意あるユーザが改変版のWinnyを流通させる恐れがある」としていることだ。
もちろんWinnyは社会的にはひどい使われ方をしていたわけで、それは最初から予想できていただろうし、自分に開発の自由がなくなることも予想できたはず(実際そうなった)。その危険を侵してまで技術的有用性の実証を優先したいのだったら、理論武装としてはまずはソースを公開して社会に価値を問う、というのが筋だろう。
なお、まえがきに「本書を出版する機会を与えてくださった、東京大学の平木敬教授に感謝いたします」とあったけれども、大学生のときはこの人の授業を受けていましたよ。面白い人だったけれども、こんな企画にも関わっていたとは意外。
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- 【書評】Winnyの技術(2005.10.30)
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