【本】反貧困
派遣村で一躍有名になった人の本。
「ちょっと仕事でつまづいた」という状態からホームレスになるまでの間のセーフティネットを充実させるべきだ、という意見には賛成だし、この周辺の行政(特に生活保護関係)が腐っていて制度として機能していないのもよくわかるんだが、今後どうすればいいのかというのは難しい。
これに関連した問題で前から気になっているのがある。世の中全体で、技術と資本の蓄積が十分に進み、生産性が極限まで高まると何が起きるのか? 現代はその過程の中でどのくらいの位置にいるのか? という問題だ。
(1) 生産性が高まったので、単純労働しかできない低スキルの労働者は少ししか必要とされなくなる。スキルと職をめぐる競争が激化し、敗れた者は飢えて死ぬ。(いまのアメリカと日本はこの路線の途中に見える)
(2) 実はそうではなく、生産性が高まったので、世の中の全員が労働しなくてもみんな食って行ける。ベーシックインカムのような制度がうまく機能して、労働はやりたい人だけがやるような世の中になる。ニートはごく普通の社会的状態になる。(共産主義の理想形に近い。もしこうなったら、「働いたら負け」という言葉はものすごく時代を先取りしていたことになる)
(3) そのどちらでもなく、現在はまだ「生産性が極限まで高まる」という状態には程遠いレベルであるので、貧困問題は産業革命以後と全く同じ理由で発生している。
個人的希望としては(2)なんだが、なにしろ人類史上はじめての社会形態なので予期しない問題もいろいろ起きるだろう。もし僕が生きてる間にそれを目撃できたらそれほど幸運なことはない。
あと、保護を求める人は何かと憲法25条で保証された「健康で文化的な最低限度の生活」というのを根拠にするが、これはたいへん腹立たしい。憲法をよく読むと、12条には
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
と書いてある。ちょっと失業したくらいで行政に保護を求める奴がこの理念に反してるのは明らかだ。
「健康で文化的な最低限度の生活」の保証というのは、ナチスの強制収容所ほどにはひどくない生活、というぐらいに理解しておくのが無難だと思うよ。今の政府に多量のニートを養う余裕があるわけないもの。
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出版社: 岩波書店
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モラルハザードってやつですね、わかります。
投稿: | 2009.01.17 21:52
>ちょっと失業したくらいで行政に保護を求める奴がこの理念に反してるのは明らかだ。
確かに貯金がたくさんあって、すぐに衣食住を満たせなくなるような状況なら、濫用とも言えなくもないのですが、派遣村にやってくる人々は貯金すらありません。
そして、この手の人々達の場合、単純作業に従事している確率が非常に高く、中途の就職に必要なスキルというものが欠けていますし、40・50台になると仕事が見つかりづらいという現実があります
こういう状況下であれば、ホームレスになる以外に道はなく、数日もすれば、文化的な生存そのものが出来なくなってしまいます
こういう状況下で生活保護を求めること自体いけないことでしょうか
投稿: こねこねこ | 2011.01.06 10:06
>と書いてある。ちょっと失業したくらいで行政に保護を求める奴がこの理念に反してるのは明らかだ。
お国のために濫用してはならないと思っているのでしょうか?
だとすれば、その考え方は誤りです
公共の福祉のというのは英訳するとpublic walfrare(人民の権利)という意味であり、どの説をとっても人権同士が衝突しそうな場合、お互い譲り合うべきだと解釈していますし、公権力が制限できる場合も衝突した場合だけとしています
また、私人に対しては憲法の規定を直接適用することはできません
もっとも、生存権に関しては努力目標であるという解釈の仕方が一般的なので、収容所を作って管理するということも可能ですが、収容所にぶち込む方がかえって金がかかるので、国がそれを実行することはないと思います
(http://anond.hatelabo.jp/none_2271/20100727によると最低でも一人当たり27万かかりますが、現金支給なら13万で済みます)
投稿: こねこねこ | 2011.01.21 18:38