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2011.06.21

regazaの驚きの機能の件

 今回引っ越したときに、ようやく家のテレビも地デジ対応になりました。
 もともとテレビは1ヶ月に1~2時間くらいしか見ないので(半分はニュース、もう半分は娘と見る子供向け番組)、買い替える意欲は乏しかったのです。待てば待つほど性能あたりの値段は下がるし。

 そこで、新しいテレビ(東芝のregza)のマニュアルを一通り見たところ、驚きの機能がいろいろ。その中でもぶっちぎりの衝撃度だったやつを紹介します。
 このテレビはレコーダー機能が内蔵されており、HDDは別に買ってくる必要があるがUSBで繋げばすぐ使える。その関連で、「メールで録画予約ができる」という機能があった。

 これが凄すぎる。録画の指定方法は気が狂っているとしか思えない。この画像(マニュアルのページを撮影したもの)をみてほしい。
Blog_4

 このように、決まったフォーマットでチャンネルや時刻やパスワードをテキストで書いて送る仕様なのである。

 さらに、このやり方で録画予約ができるために事前に次の準備が必要だ!

●テレビをネットワーク接続する
 イーサネットのみで、Wifiは備わっていない。これは不便すぎるが、テレビは大きな電力を使うのでハードウェア上の制約かもしれず、これはまあ大目にみる。
●POPでメールを受信するための設定
 メールアドレスの準備、サーバ名の指定、パスワードの入力、等をテレビのリモコンでやるのである!
●メールを取りに行く時刻の設定
 通信がメールなので、毎時0分とか時刻を決めてそのときにテレビにメールを取りにいかせるしかない。つまり、録画したい時刻の直前にメールを送っても間に合わないってことだ。

 これだけで、一般の人はもちろん、エンジニアだってやる気が出ないよねえ。

 でも、この機能の根本的な欠陥はそういうことではなく、

●録画予約が成功したかどうかをエンドユーザ(技術のことはわからない一般の人)が同期的に知ることができない
 →これがとにかく致命的。通信インフラにメールを使うのがそもそも誤り。メールはTCP上に構築されたUDPなんだから、この機能の発案者は世の中でTCPとUDPがどういう役割分担になっているかも知らないようだ。
●この機能を使いたいのは外出中のときであるはずだが、マニュアルがないとメールのフォーマットが全くわからない。
 →せめて、この一連の手順を確実にするためのWebサイトくらいはメーカが作るべき。Web上の番組表から選択して予約完了、くらいのインタフェースにしないとだめだろう。

 の2つだ。
 この機能を、興味本位でなく実用的な用途で使うユーザは一人もいないと容易に断言できるが、果たしてメーカの東芝はそれをどれくらい認識しているのか? これはリリースできるレベルでないのは常識で考えて明らかだと思うが、どこかにストップをかける人はいないのだろうか? そうだとすれば、100年経ってもAppleと同じ土俵に立つことすらできないだろう。

 むしろ、割り切ってテレビにsshでログインしてシェルでいろいろできるようにしてもらったほうが面白そうだ。

2011.06.19

引っ越しとCATVのインターネット接続

 10日ほど前に自宅を引っ越ししました。
 前の住居は子供2人だとちょっと狭いなあ、と思ってたところに近所に良い物件が出たので。マンションと違いテラスハウス風なので子供が飛び跳ねても迷惑にならないし、新築なので設備も豪華です。近所に凄い警備の豪邸があったので「これは政治家かヤクザだな」と思ったら実は最高裁長官の公邸でした...

 ところで、今回はCATV回線が設置済みだったのでインターネット接続もCATV提供のものに切り替えたのだが、ちょっとトラブルがあったので書いておきます。
 似た症状の人に役に立つかもしれないので。

【症状】
* 接続がきわめて不安定。
* ときどき(実測で1時間に5回程度)、すべてのTCP接続が一斉に切れる。
* ただし切れても"1秒後"には復旧している

 というもの。
 Webだけならギリギリ我慢できるが、SSHやVPNや各種トレーディングツールはこれでは話にならないので困りものである。Webで検索したりした結果を総合してヒントを得たところ、「IPv6が悪い」ということがわかった。Windows側でIPv6を使わない設定にすればきれいに現象はなくなった。
 原因がOS(Windows7)にあるのか、CATVのモデムあるいはその先のネットワークにあるのかは不明だが、ルータは無罪と思われる。(ルータを介さずに直結しても現象は同じだったから)
 同じWindows環境を別のネットワークで使っていたときは正常だったので微妙な問題なのだろうけど、ごく標準的な構成のWindowsで出るのだからこれにひっかかる人はけっこういそうだ。

 この件でがっかりしたのは、CATV側に問い合わせても、「モデムの電源を入れ直せ」とかの実効性の乏しそうな指示しか来なかったことだ。いくらなんでも、この件でトラブルを抱えたのが僕が初めてだとは思い難いのだが、ひょっとするとIPv6はまだ一般の人に実用に耐えるほどには周辺のデバイスが整備されていないのかもしれない。
 確かにWifiも出始めの頃は互換性問題に悩まされたので、IPv6の実情はそのくらいなのかもしれない。

2011.06.07

なぜ優秀なプログラマは人を雇わないか (2)

 図らずも注目を浴びてしまいましたねー。前回のを書いたときの自己査定では、「はてブ」の数で100行けば多い方かな、というところだったのですが、400弱まできました。このブログでも史上2位です。
 いくつか書き足らないところ、コメントを見て気づいたところ、等があるので補足します。

●そもそも会社を大きくしようと思っていない
 初めて仕事でソフトウェアを書くようになったのが19歳(15年前)なので、これまでの経験で自分が経営者向きでないことはよくわかっている。単に資質的に向いていないだけでなく、過去のサラリーマン時代に経営者としての苦労を垣間見ているので、あれははっきりやりたくないと感じる。脇で見ているだけでもそう思うのだから、実際にやったらどれほどのものか。
 いくつか指摘があったとおり、「大きな組織でないと作れない製品がある」というのはそのとおり。だが、そうすると製品ではあっても作品ではなくなってしまうのでイヤなのである。自分の作品を世に出す、ことを僕は重視しているので、姿勢としては漫画家や映画監督に近い。

●人月仕事はしていない
 ここ数年は、いわゆる受注の仕事はしていません。基本的には我々の著作物であるソフトウェアをライセンスするビジネスなので、理論的には収入は青天井。だが、世の中には仕事のエネルギー保存則みたいなのがあって、かかった労力に対して極端に大きな売り上げを得るのは困難なのです。仮にそうなれそうでも、儲けすぎると罪悪感みたいなのが出てきて、頼まれてもいないのに値引きしそうです。

●現状がわりと居心地良い
 別にこの話は、「会社を大きくしたいけど道筋が難しいなあ」と悩んでる話ではありません。
 サラリーマンをやめてからは6年ちょっと経つけど、今は当時の数倍の収入を半分の仕事時間で得ている(ソフトウェア業界にいながら、毎日18:30に家族と夕食をとっているのは珍しいはずです)ので満足度は高いのです。周りのデキるプログラマにもこういう路線は多い。
 ところが、外部資本を入れて上場目指して...という話になると「永遠に」規模の拡大を目指さなければならず、つらい。

●GREE等について
 昔ながらのゲームを愛する一人としてもともと気に入らない、というのがあった。せっかくユーザ基盤と資金があるんだから、失敗のリスクを冒しても独創的なゲームを作ることにチャレンジすればいいのに、既存のゲームのキャラクターだけ取り換えた安い作りのゲームを出しているのが気に食わない。少しは任天堂やセガやカプコンを見習ってほしい。

●で、これからどうすんの?
 基本は、大きなストレスのたまらない範囲で地道にやっていき、無理な拡大はしないことになるだろうが、「もっと大きな会社に丸ごと売却する」というExitはありうる。その場合僕は、これまで自分でやってきたことを買ってくれた会社の内部に統合をする責任は最後まで果たすが、そのあとはたぶんまた独立して、まったく別のソフトウェアをイチから始めるのではないかと思う。

2011.06.05

なぜ優秀なプログラマは人を雇わないか

 僕の知っている範囲だと、優秀なプログラマはフリーランスか小規模な法人のオーナー社長であることが多い。人を雇っている場合でも、ほんの数人である。もちろん僕もその一人。そりゃまあGoogleやMicrosoftの本社には凄いプログラマもいるだろうけど、日本人だと本当に一匹狼系の人が多い。
 僕もフルタイムの従業員を雇って1年以上経ち、人を雇うと何が起きるのかについてけっこう分かってきた。なので、なぜこのようになるのかについて考えてみた。

 なんと金銭的な面「だけ」でも、合理的な理由をつけることができる。僕を含めた何人かを平均したモデルで例を出してみよう。すごく単純化しているけれど。

 いま一人の優秀なプログラマがいて、平均的な会社でサラリーマンとして働いても年俸1000万取れる実力があるとしよう。この人が独立した場合、「好きなプロジェクトを選べるのでやる気が出る」「独立していることについてのリスクプレミアムも自分で取れる」という要因で、能力は同じでも2000万/年はほぼ確実に取れることになる。
 つまり、フリーで誰も雇わずに独立して仕事すれば年収2000万だ。

 そこで、彼が人を1人雇った場合を考える。
 人を雇った場合、彼の半分の能力を持っていれば上出来である。半分、というのは、もともとの素質の面もあるし、オーナーか雇われかというモチベーションの違いもあるので概ね妥当だと思う。決してこの従業員がボンクラということではなく、どうしたってそうなるものだ。
 一方、この従業員にいろいろ指示をしたり、仕事の軌道修正を日々したりする必要があるので、彼が一人で仕事しているのに比べて少なくとも10%の時間は指示を出すことに使わざるを得ない。すると、自分の10%を犠牲に50%の追加能力を獲得したから、全体としては人を一人雇って140%の力になったことになる。
 実際には、従業員が半分以下の能力しかないことも、10%以上の時間を取られることも多いので、140%というのは高めの見積もりである。

 一方、この従業員には少なくとも年500万は払う必要があるだろう。そこそこ使える人材を取るには必要なコストだ。それに社会保険やオフィスの家賃を加えると彼の負担増加は年600万である。

 同じ理屈で、2人雇えば180%の力になるだろう。おおむね、売上が仕事のパワーに比例するとすれば、表にまとめるとこういうことになる。

能力売上人件費利益
1人でやる100%2000万02000万
1人雇う140%2800万600万2200万
2人雇う180%3600万1200万2400万

 これが示すのは、この優秀な人が一人雇ったところで、自分の実入りは10%しか増えない、ということだ。一方、人を雇った場合、仕事が不調な時期でも給料を払わなくてはいけない緊張感や、自由な時期に休暇が取れない不便があるので、これでは人を雇う意味が薄いのである。
 一方、年俸1000万クラスの従業員を雇うのは売り上げ規模的に無理がある。

 金銭面だけでもこうなのに、加えて優秀なプログラマは、

* 総じて内向的であり、人を雇ってビシビシ指示を出すのに向いていない性格のことが多い
* 自分が集中してコーディングをする時間を邪魔されるのを極端に嫌う

 という傾向があるために一層人を雇う意欲が薄くなる。

 僕の身の回りではほぼこの理由で、「人を雇って規模拡大を目指さない優秀なプログラマ」が多い説明がつく。
 実際日本ではそういう名の知れた会社はないし、わずかにその傾向があるMixiやGreeでさえ創業者は文系学部出身だ。個人的面識はないが、おそらく子供のときにプログラミングはさほどしていないだろうし、技術的に興味深いことをしている会社ではないのでハッカー文化は持ち合わせていないのだろう。
 念を押しておくと、これは創業者が優秀なプログラマである会社のケースであって、創業者がプログラミング以外の才能を持っている場合はまったく違う前提になる。

 ところがアメリカではそうではない。反例はゴロゴロしている。ビル・ゲイツを元祖として、凄いプログラマが創業した大きな会社はたくさんあるので、何かこの論理で根本的に見落としている部分があるはずだ。
 自分で怪しいと思うのは、「売上が仕事のパワーに比例するとすれば」というところだけども。実は比例より強く増えていくのかもしれない。

 まあもちろん、どっちが正しいというわけではないです。少なくとも僕は、資金繰りや株主からの突き上げにキリキリしながら組織を回すより、少数の仲のいい仕事仲間と家族が幸福だったり、ときおりプライベートなハッキングをするほうが明らかに好きですがね。

→反響がわりと大きかったので補足記事を書きました。

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